「ひーエッセイ」 バックナンバー

 

 

   

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目からうろこがぼとりと落ちる
     ★★ひーエッセイ★★     2003/07/01 発行
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第92巻 「あぁ、何だかなぁ。」
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●その1 スポーツクラブのおばちゃんたち

 週に2〜3度の割合で、最近スポーツクラブに通い始めた。

 私はもともと家でまったりぼーっと過ごすのが大好きで、食料さえあれば1日中外出しなくても苦にならない性格である。それが高じて、私は万年運動不足だ。
 そしてその副作用が、万年肩こりと万年倦怠感。今年に入ってから、それがかなりきつくなっていた。

「また鍼に通おうかな(第2巻「鍼やり出して3年目」を参照下さい)」とつぶやいていた私に、ある友人がこう脅した。

「あんた、そのままやったら、間違いなく将来生活習慣病になるで」

 運のよいことに、我が家から徒歩10分ほどの場所にジムとプールを完備しているスポーツクラブがある。平日は夜10時まで開いている。
 先月入会以後、主にジムでストレッチやマシンを使って体を動かしている。

 何しろ万年運動不足の私、あまり無理をしないようにセーブしてはいるが、それでも結構こたえる。最初は酸欠で、頭痛がしたくらいだ。
 でも慣れてくると、すごく気持ちいいのだ。最近では肩こりもだいぶましである。

 私が行くのはたいがい夜だが、それでもたくさんの人が汗を流している。今はジムしか利用していないけど、エアロビなどのスタジオメニュー以外では、おばちゃんは見あたらない。

 1時間ほど運動した後、私はスポーツクラブのお風呂に入らせてもらう。
 第72巻「リセットは長風呂で」でも書いたけれど、私は湯船にずーっとつかっているのが大好きだ。
 肩までお湯につかっていると、ジムでは見かけなかったおばちゃん軍団が、いるわいるわ。

 クラブ内で見かける女性の9割以上が、おばちゃんである。

 ほとんどのおばちゃんは、プールで時間を過ごしているようなのだ。
 風呂場とシャワー室やサウナ室は短い廊下でつながっていて、その先にプールへの入口がある。
 そんなわけで、立派な体格をしたおばちゃんたちが次々に出現する。

 当然おばちゃんは、お風呂場にもやってくる。

 お風呂の洗い場には、洗面台が4カ所あるのだが、おばちゃんのシャンプーの仕方も様々だ。
 隣の人に気を遣ってちんまりとしている人もいるかと思えば、ばっさばっさと髪を振り乱し、シャンプーの泡やすすぎのお湯を隣の人へおかまいなしにぶっかけている人もいる。

 普通のお風呂のすぐ横に水風呂があるのだが、その水風呂のすぐ横に洗面台がある。水風呂に入る女性の体積によっては、盛大に水があふれ出る。その水は洗面台にいる人の足下に流れ出す。
 20度くらいの水なので、当然すごく冷たい。

「すみません、入ります」とおっしゃって下さる方もいるのだが、ほとんどのおばちゃんは何も言わず「じゃぼーん」と飛び込んで下さる。
 若い人の方が、よっぽど遠慮深い。

 私にスポーツクラブ入会を勧めてくれた友人も別の施設に通っているのだが、冷凍した果物をサウナ室に持ち込んで食べているおばちゃんがたくさんいるらしい。
 果汁がこぼれて床が汚れるのも、おかまいなし。施設側も困っているそうだ。

 そんなおばちゃんたちに限って「近頃の若い人は・・・」とぼやいている。

 館内には、至る所に張り紙や掲示板がある。読んでみると「とほほ」な内容ばかりである。

「履き物を入口に置きっぱなしにしないで下さい」
「更衣室でお使いの履き物のまま、外に出ないで下さい」
「洗い場を占領しないで下さい。混雑時には譲り合ってお使い下さい」
「水着を着用したまま、入浴しないで下さい」
「入浴する方のための脱衣場に荷物を置いて、占領しないで下さい」
「タオルを風呂の湯につけないで下さい」
「足はきちんと拭いて、更衣室の床をぬらさないようにしましょう」

 もっとたくさんの注意書きがあったように思うのだが、覚えきれない。
 でも極めつけは、風呂場・脱衣所・トイレ、どの場所にも貼られているこの掲示である。

「汚物は、トイレに捨てて下さい」
(男性の皆さんへ:こんなことは超がつくくらい、女性にとって常識なのです)

 これだけの注意書きがあるということは、この注意書きに書かれた行為をする人が後を絶たないということである。
 厚顔無恥なおばちゃんたちが、いかに多いかということでもある。

 あぁ、何だかなぁ。私もこんなおばちゃんに、なっちまうのかな。


●その2 ミスから思うこと

 時々、データ入力の仕事をやらせてもらうことがある。

 このデータ入力は、SOHO形態で仕事をしている人に最も人気がある。初心者でも比較的取り組みやすい仕事だからだ。
 報酬の割にきつい仕事である。でも希望者は非常に多い。

 最近では、入力者同士がグループを組み、そのグループリーダーが大量の仕事を一括して受注し、それをメンバーが手分けして行うというグループワーク形態が一般的になりつつある。私もある入力グループに所属させてもらっている。
 クライアント側も窓口が一つの方が便利だし、一つのグループに一括発注する方が安上がりだからだ。

 データ入力にもいろいろな種類の仕事があるのだが、各種会員申込書に記載された内容やアンケートなどの結果を入力するというものが、比較的多い。
 決まったフォームに入力することもあるが、Microsoft社の表計算ソフト「エクセル」を用いて入力することが多い。

 なぜ表計算するわけでもないのに「エクセル」かというと、「CSV」という形式でファイル保存することができるからだ。
 例えば、Microsoft社のワープロソフト「ワード」で作った文書を他のワープロソフトで読み込んでも、完全な形で再現することはできない。だけどこのCSVファイルは応用範囲が広く、他のソフトでも読み込むことが可能だからだ。

 先日も、あるメンバーズカード申込書の内容を入力する仕事をした。
 そこには当然ながら、本物の生データが記載されている。数百人のプライバシーの一部が、私の手元にある訳である。
 私って怖い仕事をしてるんだな・・・などと、ふと思う。

 作業は仕様書に沿って進める。仕様書に記載されていない不明点は、グループリーダーに質問し、グループリーダーはクライアントに確認して質問者に回答する。
 SOHOの連絡方法は、原則メールである。特にグループワークの場合、携わる人が多いので電話連絡などは基本的にあり得ない。

 今回、携帯電話用メールアドレスと、パソコン用メールアドレスを入力する必要があった。
 でもたまに、携帯電話用メールアドレス欄にパソコン用メールアドレスが記入してある申込書が出現する。

 こんな場合のことは、仕様書に記載されていない。ということは、グループリーダーに質問して、指示を仰がなければならない。
 今回もそうしなければならなかったのだ。

「携帯電話用メールアドレス欄に、パソコン用メールアドレスが記載されています。どのようにしたらいいですか?」と。

 でも私は、質問メールを送らなかったのだ。

 申込書記入者の書き間違いであることは、明らかである。メールアドレスを見れば一目瞭然のことを、わざわざ質問することもない、と思ったのだ。
 それで私は、パソコン用メールアドレス欄に修正して入力し、その旨を付箋紙に書いて貼り付けて納品した。

 それからしばらくして、こんなコメントがグループリーダーから全員に発せられた。

「(仕様書に指示している以上に)付箋を付けすぎている人が多いです。わからないことは、きちんと質問して下さい」

 私の行為は明らかにミスである。
 よけいな付箋をつけてはいけないと仕様書に記載してあったし、どうすればいいかということをメールで質問すればよかったのだ。
 でも、それでも思うのだ。こんなあたりまえのことまで確認しなければいけないのかな、と。

 こういうことにぶつかった時、私はメール連絡の限界というものを感じる。

 全員が同じ現場で同じ作業をしていれば、不明点がすぐ質問できる。お互いの知識も交換しあえて、もっと効率よく仕事ができるんだろうなって。

 見ず知らずの人間同士がグループを組み、協力しあってひとつの仕事を行う。それはインターネット社会になったからこそ可能となったことである。
 こんな社会が来なければ、私も現在とは違う道を歩んでいただろうし、出会う人や社会も今とは全く違っただろう。

 でも新しい可能性の陰で、それまで通用していた手段が「効率」という名のもとに消え去っていく。そして新たな問題が生まれる。

 あぁ、何だかなぁ。どんなことでもなかなか新旧の共存とか、新旧のいいとこ取りってできないものだなぁ。