「ひーエッセイ」 バックナンバー

 

 

   

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★★ひーエッセイ★★ '02/09/10(Tue)発行
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第61巻 「新宿ぶつぶつ歩き」
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 先日、6年ぶりに東京へ行った。
 東京に行くのは3度目だが、利便性がよいこともあり、今回は新宿を拠点にして行動することにした。

 新横浜で新幹線を降りて、町田に住む友達に会って、小田急線で新宿に到着した。
 東京へ来るたびに、なぜあんなに人が多いのだろうと感心する。日本人だけではなく、外国人(特に白人系や黒人系)も多い。電車の各車両には、必ず乗っておられると言ってもいいくらいだ。
 大阪では、電車内に全くおられないことの方が多い。

 新宿には、JRと地下鉄と2本の私鉄の駅がある。そのせいか、駅の入口がやたらたくさんある。
 今回はJR新宿駅を基点に動いたのだが、この駅の出口は10近くある。実際に電車が走っている場所から、遙か遠く離れている出口もある。改札からホームまで距離があるので、改札を入ってから歩き続けなければならない。無駄である。
 大阪はこうではない。改札に入ってしまえば、ホームはすぐだ。新宿駅のような、無駄足を踏ませない。

 だからJR新宿駅で出口を間違えると、えらいことになる。とりとめもなくあちこちに出口があるので、たちまち迷ってしまう。西口から東口に行くのに、私はどれだけ歩いたことか。
 大阪駅などにも出口はたくさんあるが、基本的にまっすぐに駅構内を通り抜けられるようになっている。だから、出口を間違えてもそれほど迷わない。

 同じホームに、山手線と中央線の電車が停車することも不思議だった。どうして同じホームから、同じ線の電車を発着させないのだろうか。それに、同じ線でも各駅停車と快速電車が違うホームから発車したりもする。
 大阪でこんな事をしたら、「乗り換えがめんどくさい」と、非難ごうごうであろう。

 地下鉄も縦横無尽に張り巡らされていて便利なのだが、線がたくさんありすぎて、目的地に行くためにどの線に乗っていいのかがわかりにくい。
 大阪の地下鉄のネーミングは、御堂筋の下を走っている地下鉄は「御堂筋線」など、道路の名前に基づいていたり、鶴見緑地が終点である「長堀鶴見緑地線」など、最終目的地を線名にしたりしているので、わかりやすい。
「大江戸線」なんて言われても、どこからどう延びている線なのか、見当もつかない。東京の傲慢さみたいなものが、垣間見えたりする。

 東京の地下街の作り方は複雑で、連続性がない。だけど大阪の地下街は充実していて、何キロも途切れずに続く。それに大きな駅近郊にある主なビルは、地下街ですべてつながっている。
 だから、仕事をして、買い物をして、食事して、遊んで、電車に乗って帰るということを、全て地下街だけで行うことも可能なのだ。

 そして何よりも、どこへ行っても黒山のような人だかりである。特にJR新宿駅東口はすさまじい。どこからこれだけの人が湧いて出てくるのかと思うぐらいだ。
 でもこんなに人がいるのに、頭が切れそうで、賢そうな顔をしている人には、滅多に会えない。目の奥が、みんなぼんやりしている。
 そして、聞き慣れない若者口調の関東弁が飛び交っている。関東言葉にはどうにもなじめない私にとっては、疲れるだけである。

 ただ大阪にあればいいなと思ったのが、小銭が一気に入れられる自動券売機だ。これはまだ大阪には多くは普及していないが、JRや小田急の券売機に関しては、ほぼ100%完備されていた。
 これは本当にいい。混雑緩和に絶対役立つ。

 タッチパネル式の券売機が多いことにもびっくりした。表示が大きくてこれも便利だと思ったのだが、手あかでセンサーの感知が悪い時が多く、何回もタッチしなければならなかった。
 駅員さん、もっとこまめに拭いてください。

 駅といえば、自動で水を流してくれるタイプのトイレが多かった。どんなに古そうなトイレでも、センサーに手を近づけると水が流れるタイプのトイレが完備され、デパートなど少しこぎれいなトイレだと、便器を離れて数秒後に水が流れ出す。
 正直大阪は、こういうトイレの普及率は悪い。便利だけど余計なお世話だと、私は思ったりする。第一、大阪のトイレには紙がないというのが常識だ。そのかわり、トイレの入口にポケットティッシュの販売機があったりするのである。

 おみやげを買うために、デパ地下のお菓子売場も徘徊した。けれど売っている物は、大阪とさほど変わらない。実は、大阪から西の地方都市に行っても、デパ地下お菓子事情は大阪とさほど変わらないのだ。
 やはり大阪・神戸・京都の名物は、おいしいのだ。東京産お菓子を選ぶのに苦労はするが、なんか妙にうれしくなったりする。

 東京の人は、並んで待つ。根気よく、待つ。エスカレーターに乗る時も、左側にきちんと並んで、順番に乗っている。2列に並んで乗っている人はいない。
 大阪では反対に、立ち止まる人は右側に並ぶ。最近ではだいぶ浸透してきたが、それでも東京の人のように並んで待つことは、大阪人は基本的に苦手だ。左側があいていたら、どんどん乗る。どんどん駆け上がる。
 東京は人口が多いので、たぶん「待つ」ということにさほど抵抗がないのだろう。

 新宿の都庁にも、今回足を運んだ。新宿西口からガード下(道路下?)を通って都庁街に向かうのだが、そこに「動く歩道」が設置されている。その日は停止していたのだが、その止まっている歩道の上に掲げられている案内板の電気は、つけっぱなしである。
 消せばいいのに。もったいない。

 その「動く歩道」沿いには、ちょっと太めの魚肉ソーセージを斜め切りしたようなオブジェが、たくさん置かれている。あれはいったい、なんなんだろう。
 そんなオブジェを置くなら、あの空間に店舗を出せばいいのに。雨もあたらないし、駅前なのに、もったいない。

 そして、都庁に到着。笑ってしまった。なんだ、これは。

 日本の首都として、ランドマークとして必要だったのかもしれないが、とにかく無駄な大きさである。緊急時に避難する時の対策とか、考えているんだろうか。
 それに普段使われていない部屋は、何部屋ぐらいあるだろう。部屋が余っているなら、民間のNPOなんかに安価で部屋をレンタルしたら、儲かるのにな。

 こんなことを考えてしまう私は、やはり大阪人である。

 都庁には中庭のようなところがあり、都民が使えるスペースになっているらしい。私が行った日には、「大江戸祭り」とかいう催しが開かれていて、みんな踊っていた。
 大阪人なら、こんなもったいないスペースの作り方はしないだろうな。見通しはいいけれど、警備も大変だろうなと思ったりした。

 ただ都心なのに緑が多いと言うことはうらやましい。公園も点在し、散歩したりジョギングしたりする人たちも見受けられた。
 道路も整備され、整然と車が走っている。大阪のように、違法駐車など見あたらない。

 都庁の最上階に上がってみた。天気が悪かったので、あまり遠くまで見渡せなかったけれど、「ああ、ここが東京なんだ」と漠然と思えた。
 最近どこへ行っても、変化が感じられない。京都駅などは最たる例で、あの駅ビルは京都らしさをぶっつぶしてしまった。だけどこのような高層ビルが林立する都市は、やはり東京しかない。
 この新宿が、最も「今の東京」らしい場所なのかもしれないなと思えた。

 夜行高速バスで大阪に戻るため、新宿のバスセンターに向かった。待合室に入ると、とたんに関西弁が耳に飛び込んでくる。たった1日聞かなかっただけなのに、懐かしく感じる。
 激しい雷雨の中、バスは出発した。さよなら、新宿。さよなら、東京。

 人口は東京ほど多くはないが、違法駐車やひったくりが日本一多くて、夏は日本で一番暑い日が何日もあって、過ごしやすいとはいえない大阪。
 景気はどん底で、失業者がたくさんいるけれど、それを笑い飛ばす度量がある大阪。
 関東人にどんなに邪道と言われようと、お好み焼きやたこやきを夕食として食べたり、焼きそばとご飯を一緒に食べたりする大阪。
 東京よりも不便かもしれないし、東京と肩を並べるくらいの勢いはもう取り戻せないかもしれない大阪。

 けれど、私はやっぱり、そんな大阪が好きなんだと再認識した、新宿での2日間だった。