「ひーエッセイ」 バックナンバー

 

 

   

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★★ひーエッセイ★★ '02/06/25(Tue)
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第50巻 「ぼん、ぼん、ばあっ」
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 先日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJと略します)へ、初めて遊びに行った。私の晴れ女パワーが炸裂したおかげで、絶好のお遊び日和となった。
 USJ珍道中に付き合ってくれたのは、私のくだらない質問にもあきれながらでも的確に応答してくれる貴重な友人、「スーパー雑学人」Nちゃんである。

 USJまでは、JR大阪駅から電車で10数分である。電車内には若いカップルを始め、スニーカーにパンツスタイルで気合いを入れている、おばちゃん軍団も乗っていた。

 Nちゃんによると、USJは最初、「ユニバーサル・スタジオ・オオサカ」という名前に内定していたらしい。

「それがな、ユニバーサル・スタジオ・オオサカをアルファベットにしたら、『USO』になるやろ。そのまま読んだら、『うそ』になるやん。縁起でもないっていうことで、変更になったんやで」
「その話、絶対嘘や」
「絶対、ほんまや。新聞に載ってたもん」

 そんな言い合いをしているうちに、USJの最寄り駅「ユニバーサルシティ駅」に到着である。USJのゲートまでは、駅から歩いて5分ほど。東京駅から東京ディズニーランドに行く距離に比べれば、大阪駅からUSJへの距離はあっけないほど近い。
 そもそもUSJが建てられた場所には、ある鉄鋼会社の工場があった。駅から近くて、敷地が広くて、海が近いのはあたりまえなのである。

 USJ内は、ニューヨークエリアやハリウッドエリア、ウェスタンエリアなどいくつかのエリアに分かれている。そのエリアごとに、売り物のアトラクションが点在している。その他にもたくさんの施設やショップがある。
 どちらかといえば、中学生以上くらいの年齢から楽しめるような場所である。

 だけどこの日本では、「お子様(大人様という言葉はないけど)」抜きにしての遊園地は、存在意義がない。「お子様」のためだけに設けられたのが、スヌーピー・スタジオというエリアではないかと、個人的に感じた。

 Nちゃんによると、USJ内の建物や通り、アトラクションは全て、いろいろなハリウッド映画のシーンを模しているらしい。映画好きなNちゃんは、USJのそんなしゃれっ気が楽しいらしい。
 それにひきかえ私は、どちらかというと邦画派である。だから、USJで取り上げられている「E.T.」や「ターミネーター」や「ジュラシックパーク」、「ジョーズ」や「バックドラフト」といった超有名なハリウッド映画を、私は全く見ていない。

「そんな非常識なやつが、こんなとこに来たらあかんで。映画見てな、ほんまの雰囲気がわからへんわ」
「映画は見てへんけど、何となくわかったで。ああ、こういうあらすじやねんなって」
「・・・なんちゅう無礼者や、あんたは」

 USJにとっては「無礼者」な私だから、自然とNちゃんとは全く違う視点でUSJを見てしまう。

「げっ、阪高(”はんこう”と読む。阪神高速道路のことを地元民はこう略すのだ)が丸見えやんか。それに、回りに日航ホテルとかも見えるし。なんか、ムード壊れるなあ」
「・・・そういえば、そうやなあ」

 予約券が発行されるほど人気のあるアトラクションは、「バックドラフト」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」「E.T.アドベンチャー」「ジョーズ」「ジュラシック・パーク・ザ・ライド」「ターミネーター2:3−D」の6つである。
 だけど、平日だからなのか、6月という梅雨の時期だからなのか、団体客がたまたま少なかったのか、理由はよくわからないけれど、私たちはこれら6つのアトラクションをほとんど待ち時間なしで、あっという間に全て制覇してしまった。
 ゴールデンウィーク期間中などは、1〜2時間待ちがあたりまえと言われているアトラクションばかりなのに。

「ジュラシック・パーク・ザ・ライド」というのは、いわゆる「急流滑り」である。滑り降りる際の傾斜も急なので、体にかかる水の量はすさまじい。
 だからこのアトラクションの入口には、かっぱ(ポンチョ)の自動販売機が数台並んでいる。背中に「ジュラシックパーク」のロゴが印刷されている。私たちは買わなかったが、5人に1人ぐらいは買っていた。ちなみに1つ、200円也。

「このかっぱの粗利(粗利益)、なんぼぐらいやろ」とつぶやいた私に、Nちゃんは冷たい視線を浴びせながらも答えてくれた。

「・・・製造原価、20円くらいとちゃうか」
「え、そんな安くはないやろ」
「そんなもんやって。絶対、ロゴの代金が高いで」
「そしたら、USJはなんぼくらいマージン取るんやろなあ」
「半分くらいは、取るんちゃう・・・って、あんた、こういう時にこんなこと、言わんといて。ほんまにもう」

 なんだかんだと言いながら、この「ジュラシック・パーク・ザ・ライド」と、船長さんのくさい芝居がおもしろい「ジョーズ」に私たちはすっかりはまってしまい、大騒ぎしながら2度ずつ楽しんだ。

「ターミネーター2:3−D」の案内役は、「あやのこうじ れいか」と名乗る、赤い服を着た女性である。この人、妙にテンションが高い。動きもロボットのようで、ちょっと「あぶない」おねえさんだ。私はおかしくて、横にいたNちゃんをばしばしとたたきながらつぶやく。

「なあなあ、このれいかさん、テンション保つん、大変やろなあ」
「そうやなあ、そやけど、この人だけとちゃうやろ。休みも取らはるやろうし」
「そうか、交代要員がおるんやな。ということは、れいかさんがあと5〜6人おるんやなあ。ひえ〜、こわいこわい、へっへっへ」
「・・・」

 アトラクションの中で1番人気と聞いていたのが、「E.T.アドベンチャー」である。乗り物の順番待ちをしている間、きょろきょろしていると、外国人(西洋人)の方たちが待ち行列に並んでおられる様子が目に入った。思わずつぶやく私。

「なあなあ、日本に遊びに来てまで、こういうとこに来るっていうの、なんかへんやと思わへん?」
「・・・あのなあ、あの人たちがアメリカに住んでるとは限らへんで。ユニバーサルスタジオっていうのは、アジアではここしかないんやし。来る人もおるやろ」
「そやけど、日本に来て、アメリカ産の施設に来るっていうのは、やっぱりへんやで。他に行くとこ、ないんかなあ」
「・・・はいはい、わかったわかった」

 こんな調子で、開園から閉園までほぼ1日USJの世界に浸っていた私が感じたのは、「ぼん、ぼん、ばあっ」のリズムである。

 USJはどのアトラクションも、水と火を効果的に多用している。火の手がぼん、ぼんと上がり、水がばあっと落ちてくる。「バックドラフト」などはその典型である。火が使えない所では、火花が飛ぶ。水は、不可抗力でかかるだけではなく、クルーたちがゲストに向かってわざとかけたりもするのだ。それさえもリズミカルなのだ。
 レストランでも、料理が紙皿に「ぼん、ぼん、ばあっ」と盛り付けられている。

 どこに行っても「ぼん、ぼん、ばあっ」の繰り返しである。これでもか、これでもかと迫ってくる。
 日本の遊園地には、こういうリズムはない。押して押して押しまくるという雰囲気もない。
 まるで、アメリカと日本の国情の違いを見ているようだ。

 USJでは、人よりもアトラクションが主役になっている。だけどそれが、「THE POWER OF HOLLYWOOD」なのだ。
 
 USJができて以来、周辺の遊園地の客が激減している。実際、関西人ならよく知っている「宝塚ファミリーランド」と「神戸ポートピアランド」は、来春の閉園が既に決まっている。
 この2つの遊園地に共通しているのが、「中途半端なあいまいさ」だ。コンセプトがよくわからない点においては、まるで今の日本を見ているようだ。

 USJで1日遊んでいて、今後は「ぼん、ぼん、ばあっ」のようなはっきりとしたリズムがある遊園地か、徹底してリズムのない「風」のような遊園地が生き残っていくんじゃないかなと、ふと感じた。
 日本国内においても、「中途半端なあいまいさ」が通用しなくなってきている。

 だけど「ぼん、ぼん、ばあっ」は、とても危うい。確かにこのリズムは、気持ちを高揚させる。興奮もする。ただ人々の習性として、より強い刺激を求めるものだ。USJ側もそれに応えていかなければならない。そう考えると、USJはどこへ向かって行くことになるのだろう。
 危うさから言えば、「風」だって同じかもしれない。意識をしっかり持っていなければ、流されてしまうのだから。

 いろいろなことを考えながら、USJでの1日を思い切り楽しんだ私であった。
 年甲斐もなくはしゃぎすぎて、次の日動けなかった。あ〜情けない。