「ひーエッセイ」 バックナンバー

 

 

   

<ひーエッセイ 第22巻 ★★テレショップで日本が見える★★>
発行日:'01/12/04(Tue)


 私の趣味のひとつに、「テレビショッピングはしご鑑賞」というのがある。
 番組全体に漂う、芝居がかったわざとらしさに、私はついつい引き込まれ、笑ってしまう。
 ちなみに、買い物をしたことは、ない。

 テレショップには、日本製作版とアメリカ製作・日本語吹き替え版の2種類がある。両者の番組の特徴は全く違う。
 日本版は、1時間で15〜6商品を紹介する。1つの商品紹介に要する時間は長くても数分。なのに、番組全体がまったり、こてこてなのだ。アメリカ版は1つの商品紹介に30分かける割には、テンポがよくスピード感もある。

 紹介される商品にも違いがある。日本製作版は、おばちゃんが喜びそうな物ばかりである。
 台所用品、日用品、電気製品、健康食品、フィットネス関連商品、喪服にコートに各種宝石(最近は人造が多いが)。
 6本セットで1万円の時計(スイス製で、ムーブメントは「信頼の」日本製だそうである。スイス製は信頼できないのだろうか)が出てくるかと思えば、298,000円のロレックスの時計が登場する時もある。

 それにひきかえ、アメリカ製作版で紹介される物は、より広い年齢層をターゲットにしている。
 ハリウッドスターが作った化粧品、飛距離が伸びるゴルフクラブ、食前に飲むだけで脂肪が体につかなくなるダイエット食品、掃除機を利用した散髪マシーン、部屋のコーナーを利用した大工道具不要の棚、どんな汚れでも落とすけれど、手にも環境にも優しい洗剤・・・等々。

 日本製作版テレショップ番組の代表的なものは、司会・進行役が2〜3人いて、数人の商品ナビゲーターがいろいろな商品を紹介しまくるというパターンである。
 司会を務めるのは、名前と顔は割と知られているけれど、主役にはなれない役者や、昔大ヒットをとばして、今その名残で生きているような歌手たちが多い。

 登場した商品ナビゲーターは、商品の長所のみを流ちょうにしゃべりまくる。
 司会者はそれに応えて異口同音に「この商品は、いいですねえ」「私も絶対買います!」「私もこれ、使ってますよ! すごく便利!」と叫ぶ。
 客席の「サクラ」のおばさんたちは、感心した声と共に大きくうなずく。そして値段が発表されると、「もっと高価だと思ったのに、何て安いの!」という思いを表現するために、嵐のような拍手と歓声をあげる。

 司会者とナビゲーターと観客、三位一体の「ショー」である。

 そして全く同じ内容の番組が、約2〜3ヶ月、時間帯やチャンネルを変えて繰り返し放送される。違うチャンネルで、同じ番組が同時に放送されている時があったりもする。
 商品には全て「数に限りがある」はずなのに。

 司会者や商品ナビにも「常連」がいる。
 私は司会者よりも、個性豊かな商品ナビの常連たちに惹かれてしまう。だけど、司会者によって番組全体の流れが違うのも、確かである。

 「私のマルチカッターは、とにかくすごいんですよ」とか言いながら、キュウリや人参やりんご、山芋やキャベツやトマトやサラミを切り続け、おまけでついてくるセラミックおろし器で大根おろしを司会者にやらせる、村松氏。
 彼はこの「マルチカッター」以外は紹介しない。頑固一徹である。

 「お掃除、『ぱっぱ』とすませましょう。8,800円(「ぱっぱ」にかかっている)でのご紹介です!」と掃除機を紹介していたかと思うと、違う番組では「掛け敷きカバーと羽根枕と専用枕カバーをつけて、そのうえ肌掛け布団もおつけして、ジャスト10,000円!」と羽根布団を紹介し、また違う番組では「ほっとくだけで料理ができます。その名も、ほっとく鍋です!」と鍋を紹介したりと、業界では売れっ子なんじゃないかと思われる、滝沢氏。
 彼はとにかくあちこちのテレショップを掛け持ちしている。

 「このお値段を耳になさったことないと思います(私は何回も耳にしている)」と値段発表の前に必ず前置きし、その後司会者から「安すぎるけど、大丈夫?」と聞かれて「大丈夫じゃないっす」と言って汗をぬぐうふりをする、北氏。
 ロレックスを売っているのは、彼だけである。

 「更に、もう1袋!」と叫びながら、クロレラ粒約2キロを秤の上にあふれるほど載せる、春日女史。
 初めてテレビに登場した頃は、彼女はセリフをかみまくっていた。

 「今日は、べっぴんさん(という名前のメラミンスポンジ)のご紹介。包丁でさくーっと簡単に切れます。フリーカットですよー。茶渋の付いた茶碗もこれを使えば、真っ白素肌のべっぴんさん!」と毎回同じ事を言う、大野氏。
 以前は「○○さんはベストドレッサー、このエチケットブラシはベストトレッサー」と言いながら、「お掃除3点セット」なるものを売りまくっていた。

 他にも、ローヤルゼリーを売りまくっている八幡氏、最近は植木ばさみを扱っているけれど、昔はかまぼこ板を切りながら包丁を紹介していた玉寄氏、「プロが惚れた洗剤」でスリッパの裏をふいている児玉氏など、まだまだたくさんいらっしゃる。

 アメリカ製作版のテレショップは、わざとらしさも洗練されている。そしてとにかく、大げさなのである。
 最近日本でもこのパターンのテレショップは増えているが、アメリカ製に比べて中途半端である。

 商品の使用前・使用後の比較、類似商品との比較は特に念入りだ。
 「トイレ掃除にこの用具を使用する前」という画面には、防毒マスクをつけた女性が登場してくる。
 「この器具を使えば、腹筋が強化されます」という言葉を証明するために、その器具を使って腹筋を鍛えた人(らしい)のお腹を、プロボクサーに何度もパンチさせる。
 ワックスの効果を試すために、車のボンネットに火を付けて肉を焼いたり、車全体にトラックの荷台いっぱいの泥水をぶっかける。
 エアベッドの強度を示すために、トラックにベッドの上を通過させる。
 エンジンオイルの効果を試すために、オイルを入れた車のエンジンを、冷凍庫に一晩入れて凍らせる。

 何よりもおかしいのは、吹き替えされた台詞である。この台詞で「洗練されたわざとらしさ」は、更にヒートアップする。

「ハーイ、ケン、元気だった?」
「元気だったよジェーン、会えてうれしいよ。ところで手に持ってる物は、何?」
「ケン、これが○○っていう商品よ。今日はこれを紹介するわ。これを使うと、今までの苦労は何だったのかと思うわよ」
「へえ、楽しみだなあ。早速試してみてよ」
「あーらケン、このオーブン、すごく汚れてるわねえ。でもこの汚れも、これを使えばあっという間よ。ほーら、見て」
「わーお!すごいや。信じられないよ、ジェーン」

 テレショップのはしごをしていると、今の日本人の生活状態が垣間見えてくる。

 数年前に「布団圧縮袋」が登場した。布団を入れて、掃除機で空気を抜いて圧縮してぺったんこにするための専用袋で、布団を圧縮することにより、押入が広くなるというふれこみの商品だ。
 売れない商品は二度と出ない。テレショップは結構シビアな世界である。でもこれはバージョンアップを重ねて、今も販売されている。
 この商品が売れ続けているということは、物をため込んでいる人がかなり多いということである。

 イオン式空気清浄機がやたら出回っていた時もあった。このころは、花粉症やハウスダストが社会問題となってきた時期と重なる。国内有名電機メーカーが大量生産し始めたのは、テレショップでのブレーク以後である。
 「ハンドジューサー・ハピネス」や「金魚運動器・うれっこ」などは、一時大ブレークし、瞬く間に類似品が出回った。健康やダイエットに関心がある人が多いことの現れである。

 テレショップには、景気も反映される。ショップの入れ替わりも激しいし、中には倒産したショップもある。いつの間にか見かけなくなった商品ナビもいる。
 「ほんまもん」の商品が少なくなった。テレショップの看板商品だった本真珠も、最近はほとんど見なくなり、「人造パール8点セット1万円」に変わってしまった。

 テレショップを見ると、今の日本がわかる。そして笑える。
 一粒で2度おいしい、それがテレショップなのだ。