「ひーエッセイ」 バックナンバー

 

 

   

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目からうろこがぼとりと落ちる
     ★★ひーエッセイ★★     2004/03/11 発行
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第104巻 「よそみばかりの、おのぼりさん(下)」
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 東京という場所は、とにかくたくさんの地下鉄が網の目のように張り巡らされ、それらが妙なつながり方をしているので、ひとつ間違えると無駄足を踏むことが多い。出発前に調べてきたルート通りに、東京駅から地下鉄に乗車し、無事「表参道駅」に到着した。

 東京には数回来たことはあるが、実は「青山」という場所は初めてである。地図を片手に持ち、きょろきょろしながら地上に出た。青山通りを右に見ながらとことこ歩くと、大きな交差点にぶつかる。そこを左折すると骨董通りである。

「骨董通り」と名前が付いているくらいだから、たくさんの骨董屋さんが軒を連ねる落ち着いた場所なのかなと、私は勝手に思いこんでいた。「すてきな骨董品がありますよ」といった類のキャッチセールスもどきの人だっているかもしれないと、期待もしていたのだ。
 なのに目に入ってくるのは、デザイナーズブランドのブティックだの、オープンカフェだの、こじゃれた雑貨屋だのといった、およそ「骨董通り」とはかけ離れた店ばかり。それに日曜日ということもあって、路駐している車と、妙におしゃれをした人が多いこと。
 私は盛大にがっくりきてしまった。

 でも、これが「東京」なんだと思う。名前を付けてPRしてしまえば有名になり、全国から人が集まってくるんだと。悔しいけれど、東京はやはり日本の中心地なのだ。

 てこてこと歩き続けること約10分。左手に目的地である「モーダポリティカ」の看板を発見した。開場予定時刻の30分も前に到着してしまった。

 まだそんなに人も集まっていない。待つのも退屈なので、骨董通りをもう一往復してみた。落ち着いて見てみると、確かに骨董屋さんがたくさん見受けられる。骨董屋さんばかり入居しているビルも発見した。日曜でほとんどの店が休みなので、目に入らなかったのだ。
 でもやっぱり、ちょっと期待はずれな通りだった。

 開場10分ほど前に、会場前に戻った。イベントのポスターも掲げられ、たくさんの人が集まっている。係員の人に誘導され、招待ハガキに書かれている整理番号順に並ぶ。だけど私に振られていた整理番号は100番以降だったので、列のかなり後ろに並ぶ羽目になった。

 この日の入場者は、約200人。子連れで参加している人もおられた。招待ハガキで2名の人が入場できるとのことだったので、たいていの人に連れがいる。
 私の前に並んでいたのは、なかなかイケメンの兄ちゃん2人。寡黙である。
 後ろにいたのは、カップルである。恋人なんだか、たんなる知り合いなんだかわからない会話を、東京弁で展開していた。

「遠い所から来ている人って、いるのかなぁ」
「さぁ、ほとんど東京とかその辺の人じゃな〜い?」

「大阪から参りました」と、自己紹介したくなる。

「応募ハガキって、どのくらい来たのかな?」
「案外、送った人、全員に招待ハガキが届いてたりして〜。ふふふ」

 私は、このイベントの抽選にはずれた人を、何人も知っている。

 今回のイベント会場である「モーダポリティカ」は、展覧会やイベント、パーティーなどが行える多目的スペースである。1階と2階に広さの違うスペースがあり、この日は広い方の2階で開催である。

 会場には椅子がたくさん並べられ、前方中央の一段高い場所には、椅子と机が置かれている。天井は高く、上を見上げるとテレビスタジオのようなライトがたくさん配備されている。
 配布されたアンケート用紙や、イベント中に使われる「孝子さんへの質問」用紙に何も書かず、開演時間までひたすらきょろきょろしていた私であった。

 主催者である大手レコード店の挨拶の後、この日の司会進行を務める女性が入場してきた。手には書類、そして赤い膝掛けを持っている。

 この日は天気も良くて、寒さも和らいでいた。でも会場はフローリングだったので、確かに足下が冷える。それでも、である。
 こういうイベントの司会者というのは、膝掛け持参でもいいのか〜、などと妙に感心してしまった私、イベント終了までずーっと彼女の膝掛けに注目していた。

 司会者の呼びかけで、岡村孝子さんが登場。白いセーターに花柄(だったと思う)のフレアスカートという出で立ちで、とことこと控室から登場された。
 コンサートのステージ上では大きく見えるけれど、小柄で華奢な人である。

 そして写真よりも実物の方が、絶対に美人である。

 トークショーは、コンサートツアーの様子や、秋に発売されたアルバムについての話し、近況報告などが主な内容だった。コンサート中のトークで聞いた話がほとんどだったけれど、たまに本題とそれた話を司会者からふられると、やっぱり彼女の目は泳ぐ。

 続いて質問コーナーや抽選会などが行われたのだが、質問が採用されたり抽選にあたったりした人が舞台近くに近づくと、2人は立ち上がって迎える。
 だけどその都度、司会者の赤い膝掛けが床にぼとぼとと落ちるのである。

 孝子さんより、膝掛けを見ていた時間の方が長かったような気がする。

 約1時間で、イベント終了。特典カードを手渡しながら、出口で孝子さんがお見送りをしてくれる。出口から遠い場所に座っていた私は、退場は最後の方だった。それで、係員が空いた椅子を片っ端から片づけていく様子を、ぼんやり見ていた。
 折りたたみではない椅子をどのように運ぶのかと見ていたら、あるんですねぇ、椅子専用の台車が! その台車に載せたまま椅子を収納しておけるようである。

 そしていよいよ、孝子さんと間近で対面。何だか舞い上がってしまった私、「大阪から来たんです〜」以外に何を言ったのか覚えていない。
 でも握手してくれた彼女の手は、とても温かかった。

 こうして、「よそみばかりの、おのぼりさん」の主目的は、無事果たせたのでありました。

 さて、帰りの夜行バスまでまだかなりの時間がある。
 せっかくの機会なのでまずは話題の六本木ヒルズへ足を向けたのだが・・・疲れに行ったようなものだった。クリスマス前ということで、イルミネーションがとてもきれいだったけれど、無駄なでかさと、あまりの人の多さ。ブランド品にも興味がない私には、つらすぎる。

 東京だから、首都だから、六本木ヒルズは存在が許されているのだ。やれやれ。

 次に向かったのは、お台場。新橋駅からゆりかもめに乗車した頃には日も暮れていて、ドラマでしょっちゅうお目にかかるレインボーブリッジも非常に綺麗だった。
 センスがいいのか悪いのかわからないフジテレビのビルを見上げ、夜景をぼんやりと眺めて過ごした。

 だけどお台場は、家族連れやカップルのための場所。1人でうろつく場所ではない。しみじみ。

 そして、きょろきょろとよそみばかりしていたおのぼりさんの結末は、夜行バス車内で隣に座ったおっさんのいびきに悩まされ、前に座った人が限界ぎりぎりまでリクライニングを倒してきたので、身動きが全くとれなくなるという、とほほなものだったのである。