コアすぎる、話

 

   


Vol-02 「さびしんぼう」

 その4 一人3役か4役か

主役の「さびしんぼう」を演じているのは、当時まだ新人だった富田靖子さんである。様々な偶然やタイミングが重なった結果だったらしい。

大林監督の中では、ずいぶん前から「さびしんぼう」という映画を製作したいという思いがあったらしい。目の前に様々な「さびしんぼう」候補の女優さんが出現しては消えていったと、DVDの中で語っておられる。
山口百恵さんもその一人だったらしい。

彼女が主役だったら、私は「さびしんぼう」を見てはいなかったな。
(すみません、当時私は百恵ちゃんが嫌いだったのだ)

それはともかく、私はこの映画を何度となく見た。そして見終わるたびに感じるのは、富田靖子さんはいったい何役を演じていたのだろうということである。

まずはあのへんて子。顔を白く塗り「創作劇の舞台衣装」を身にまとった、さびしんぼう。そしてヒロキにとってのさびしんぼうである、橘百合子さん。

ラストシーン。大人になったヒロキの様子が描かれる。ヒロキの子どもらしき女性が、例の「別れの曲」を演奏している。
問題は、大人のヒロキの後ろに座っている女性である。

富田さんが演じているのだからそっくりなのも当然なのだが、ナレーションもつとめているヒロキが「百合子さんにそっくりの女性」と言っているのである。
この女性が百合子さんなのか、映画の中では何も触れられていない。

ヒロキの父親・道了さんはヒロキに「思いっきり恋をしろ」と語る。そしてお見合いで知り合って結婚したヒロキの母・タツ子さんのことを、こう語る。

「お父さんは、お母さんの全部が気に入って結婚したんだ。だから、お母さんの思い出も全て、大事にしてあげたいと思う」

その言葉を聞いた後、ヒロキは百合子さんに会いに行く。そして2人は、一旦別れるのである。

道了さんの大きな言葉を胸に、その後百合子さんをゲットしたのか、それともかつてのタツ子さんと同じように、自分の思い出を大切にしまって百合子さんとそっくりの人と結婚したのか、どっちだろうなって私はいつも想像する。

私は富田さんが、3役を演じていたと信じたいな。

('03/07/21)