コアすぎる、話

 

   


Vol-02 「さびしんぼう」

 その2 伏線は、笑いから

 この映画にはまったきっかけは、特に映画前半にちりばめられている、笑いだったのだろうと思う。

 主人公ヒロキ(尾美としのりさん)とその悪友2人は、とにかくやんちゃである。
 理科室の備品を使って、すき焼きを作って食べたりもするのだ。結局、岸辺一徳さん演じる先生に見つかってしまい、秋川リサさん演じる先生と2人が”証拠隠滅”してしまうのだが。

 校長先生が飼っているりこうなオウム(宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」を暗唱する)に、「たんたんたぬきの きんたまは 風もないのに ぶーらぶら」という歌を教え込み、オウムを混乱させる。
 そして次の日、校長先生(佐藤充さん)とPTA会長(入江若葉さん。すごい怪演です)の前でオウムは「雨にも負けず、ぶーらぶら」などと暗唱し始め、PTA会長の逆鱗に触れてしまう。
 そして3人は、自宅謹慎処分。

 ヒロキのおばあちゃん(浦辺粂子さん)も、なかなかとぼけたキャラクターである。場面転換の際に時々登場して見事に笑わせてくれる。
 日当たりのいい縁側でうたたねしたり、お寺の墓地を掃除したり、お正月には一人でカルタ取りをしているし、節分には一人で大騒ぎしながら豆まきをしている。

 ヒロキのお父さんは寺の住職を勤める道了さん(演者は、当時まだ無名だった小林稔侍さん)。彼は画面にしょっちゅう登場するのだが、お経以外のセリフはほとんどない。
 タツ子さん(ヒロキのおかあさん・藤田弓子さんが演じている)の訴えにも、木魚や鐘で返事をする。それもまたおかしい。
 ヒロキが演奏する「別れの曲」と、道了さんのお経と鐘と木魚のアンサンブルも、なかなか聴き応えがある。

 お正月にタツ子さんの学生時代の友だち、おテルさんとその娘が訪ねてくるのだが、このシーンがこの映画最大の爆笑場面である。
 おテルさん親子を樹木希林さんと小林聡美さんが演じているのだが、もうそっくり!

 久々の出会いから始まり、その後「さびしんぼう」が登場したことで大騒動が巻き起こる。最後に彼女たちはけんか別れしてしまうのだが、この爆笑シーンと交互に、おばあちゃんのカルタ取りシーンが現れる。
 そのカルタの言葉が、その大騒動シーンにぴたりとはまるので、ものすごくおかしいのである。

 でも今改めて見て思うのだが、この笑いのシーンがすべて物語の伏線として使われているのだ。

 自宅謹慎処分にならなければ、ヒロキはヒロキの「さびしんぼう」がどこから学校に通っているのかを知ることはできなかったのだ。
 へんてこな「さびしんぼう」の正体を示唆してくれていたのは実はおばあちゃんだったのだが、お正月の大騒動がなければ、「さびしんぼう」の正体をヒロキが理解するきっかけは得られなかった。

 また、この笑いのおかげで、映画全体にめりはりが出ている。
 無口な道了さんが、実はすてきな言葉を投げかけてくれるお父さんだったり、きゃんきゃん騒ぎ続けているタツ子さんが、実はとてもロマンチストだったり。
 映画後半、ヒロキと道了さんが一緒に風呂に入り「別れの曲」をハミングするシーン、そしてそれを耳にしたタツ子さんの姿。

 若いときには、このシーンの意味と深さはわからなかった。

('03/05/13)