コアすぎる、話

 

   


Vol-02 「さびしんぼう」

 その1 切なさあふれる、ファンタジー

 今から20年近く前、大林宣彦監督が手がけた映画の中で、「尾道3部作」と称された作品があった。大林監督の故郷でもあった尾道にこだわって作られた作品群だったのである。

 「転校生」「時をかける少女」に続くシリーズ最終作として製作されたのが、この「さびしんぼう」である。

 「転校生」は、男女の身体が入れ替わってしまうという斬新なアイデアがあり、「時をかける少女」では原田知世ちゃんが一躍人気者となった。
 そんな華々しさに比べ、「さびしんぼう」はいかにも地味である。

 初めてこの映画を見たのがいつ、どこだったのか、全く覚えていない。でも私の手元には、いつ買ったのか記憶にも残っていないビデオがある。
 何故、1本14,000円もするビデオを買ったのだろう。当時の私の思いにも、記憶がない。

 この映画、テレビでもめったに放映されない。されたとしても、深夜時間帯がほとんどである。地味で何てことない普通の生活の中でまき起こる、ファンタジー映画だ。

 でもこのファンタジーさ加減が、大人になるにつれて切なく感じるのだ。
 主人公である高校生ヒロキが「さびしんぼう」と出会ったことで知る、切なさ。そして「さびしんぼう」の、切なさ。
 そして、映画全編に流れ、「さびしんぼう」のキーワードともなっている、ショパンの「別れの曲」。これが何とも、心を切なくさせる。

 私にとっては、忘れられない映画のひとつである。

('03/03/18)