コアすぎる、話

 

   


Vol-01 「愛の嵐」

 その15 夜想曲

 主人公のひかるちゃんは、元大地主の娘さんらしく、習い事をしていた。

 日本舞踊は、5歳の頃から母親である絹さんの手ほどきで習い始めた。絹さんもちょうど5歳の頃から、日本舞踊を始めたという。
 この日本舞踊がきっかけとなって、ひかるちゃんはお見合いをし、その席上で大河原に見初められることになる。

 もうひとつの習い事は、ピアノである。
 ひかるちゃんの女学校入学のお祝いに、伝右衛門が横浜で調達してきたピアノは、彼女の部屋に鎮座していた。
 三枝屋敷にある唯一の「洋物家具」が、このピアノだった。

 その日からひかるちゃんは熱心にピアノを弾き始める。
 文彦の友人が、一時期彼女のピアノの先生を務める。彼にひかるちゃんが襲われそうになるという危機はあったものの、彼女はそれからもピアノを練習し続けたらしい。

 結婚して三枝の家を離れるまで、彼女は折に触れピアノを弾いていた。里帰りした時も、たまにピアノに向かっていた。

 演奏されるピアノ曲には、その時々の彼女の気持ちが鮮やかに乗せられていた。

 絹さんが亡くなった日、お通夜の席でひかるちゃんは大河原の母親から、激しいののしりの言葉を浴びせられ、かなりの辱めを受けた。
 その毒気に当てられ、参列者は1人残らず帰ってしまったほどである。

 猛や文彦、そして和尚さんといったごくごく近しい人だけが残った寂しい席に、ひかるちゃんが演奏するピアノ曲が、静かに流れる。
 絹さんが一番好きだった曲、ショパンの「夜想曲」である。

 その曲を聴きながら、文彦は親不孝だった自分を悔いて泣き崩れた。そんな文彦の肩を、和尚さんは優しくたたいていた。
 ひかるはその曲を弾きながら、母親に別れを告げていた。そして部屋にやってきた猛に、「お母様に、今度は絶対に幸せになりますって、誓っていたの」と告げる。

 苦しいほど切ないシーンである。そのシーンを、この「夜想曲」が静かに優しく包んでくれている。
 私はこの曲だけ聴いても、心がうるうるしてしまう。

 この「夜想曲」はじめ、このドラマのBGMはすべて地味である。それでも、登場人物たちの気持ちを鮮やかに表現してくれていた。

('02/12/14)