コアすぎる、話

 

   


Vol-01 「愛の嵐」

 その9 ひー流 「比較愛嵐論・昭和17年編」 その2

理由その2 ためらいのないふたり(続き)

 今作のひかるちゃんのセリフで私が印象に残ったのが、「私の魂が帰る場所を、守っていてほしい」である。ひかるが大河原と結婚することが決まった時、三枝家を出ないでほしいと猛に訴える時のセリフである。
 このセリフを聞いたとき、「違う、違う」と、私は心の中で叫んだ。それを言うなら、「私の魂は、ここ(三枝家と猛)にある。だから、出ていかないでほしい」じゃないのかと、私は思うのだ。それが、ひかるという女性なんじゃないだろうか。

 もともと大河原へ嫁に行くのは、小作人のためであり、三枝家のためであったはずだ。大河原への愛情など、ひとかけらもなかったはずだ。魂まで大河原へ持っていこうとは、ひかるなら思わないんじゃないだろうか。

 前作のひかるちゃんは、こんなセリフは言わなかった。両親に「大河原へ嫁に行くのは、絶対にいや!」とか、猛に「私を連れて逃げて」と訴えたりはしたけれど、最終的には何も言わず「抜け殻」のように嫁いでいく。そんなひかるを、猛は物陰からそっと見送る。悔しさを押し殺すようにして。

理由その3 上海帰りの秀子さん

 今作で独特の存在感を示しているのが、秀子さんである。前作同様、利用されているとはわかっていながら、猛を一途に愛する女性である。実は前作では、猛と秀子さんが出会うのは、戦後になってからである。

 今作では、「上海まで好きな男を追いかけていって、結局ふられ、勇作さんの結婚式をきっかけにして、帰国してきた」という設定である。
だけどあの戦渦が広がっていた時代、上海にすっと行って、すっと帰ってこられるなんて、信じられない。
 だが、前作ではありがちな設定だった。

 ひかるが結婚前に大河原の家を訪ねたとき、たまたま秀子さんが帰ってくる。母親の静子さんは、彼女をひかるに紹介し、「東京の洋裁学校に通ってるんですよ」と言う。それを聞いた秀子さんがひとこと。

 「やだ、母さん。ドレメって言ってよ」


 「ドレメ」とは、「ドレスメーキング」の略語である。今や死語の部類に入る言葉だが、当時はたぶん最先端だったのだろう。
 そして「東京も空襲が激しくなってきたから、こっちに帰ってくる」と秀子さんは言う。

 今作では結納の場に両家の家族が大集合して、猛と秀子は出会うことになる。だが前作では、結納には大河原の代理人(仲人さん)がやってくる。また猛は、ひかるの結婚式には参列しなかった。2人が出会うチャンスは皆無だったのだ。

 こんなところにも、私は時代感が感じられて、前作の世界の方が気に入っているのだ。

('02/09/05)